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── キャラクターの顔を、時々実写にするなど、実験的なことを沢山やっていますよね。


   ええ。昔だと、きちんと構築したアニメーションの中にちょっと変な画が入ると、観ている人が違和感を感じたと思うんです。だけど、今の人なら映画の途中にいろんな画を入れても普通に観られるんじゃないかと思って。実写を入れてみたり、写真を入れてみたり。それもさっき言ったように、いい加減に入れたように見えるといいなーと思って(笑)。

── 観てる人に面白がってもらおうと。


   そうです。僕は今、普通のアニメを観たいとはあまり思わないんですよ。自分が観たいアニメってなんだろうと考えると、ミュージッククリップなんかで、実写の中に差し込んであるちょっとコミカルなアニメーションとかなんです。『マインド・ゲーム』は、それの逆にならないかと思ったんですよね。実写の中にアニメーションがあるんじゃなくて、アニメーションの中に実写が紛れ込んでるくらいな感じにならないかな、と。最初は、写真とか簡単に撮れる素材を入れていくつもりだったんですけど、プロデューサーの田中さんが「実写の監督を別に立てて、半分くらい実写にしちゃおう」と言い出したんですよ。



── そうなったとしたら、湯浅さんが監督じゃなくて「共同監督」になっちゃいますね。

   そうなんですよね(苦笑)。色々と話しているうちに「やっぱり湯浅さんが撮った方がいいんじゃないか」という話になって。量もこちらに任せてもらって所々少量、アニメに馴染ます感じで。

── 湯浅さん自身が、実写の方も撮ったんですね。

   プロの実写のスタッフに参加していただいて、実写のプロデューサーさんに見てもらいながら現場で指示を出したり、監督めいたことはしました。僕は実写は全然やったことないので、分からないことばかりでしたけど。プロのスタッフを使って本格的に撮ることになったので、今田(耕司)さんとか、顔出しのタレントさんにも出演してもらいやすくなりましたね。

── 実写の顔を使ったカットでは、例えば今田さんの顔で、今田さんが喋ってますよね。顔と声優さんが別の人ということはないんですね。


   同じです。最初は別もありかと考えていましたが、色々考えて顔と声は一緒にすることにしました。配役を決める時も、顔を出すことを考慮して選びました。顔と声を別々の人がやるよりも、いい感じになったと思います。

── 湯浅さんといえば、『クレヨンしんちゃん』や『ねこぢる草』('01)等、独創的なアニメーションで知られているわけですが、今回もその魅力が相当発揮されているのではないでしょうか。


もう、抜群に(笑)。

── アニメーションとしての仕上がりは、いかがですか。


   アニメーションとしても、すごく面白いんじゃないかと思います。今のアニメーションの流れとは全然、逆を行ったような感じになっていると思いますね。あんまり緻密じゃなくて、勢い重視の。それで面白い。「よくできている」ことよりは「面白い」ことを狙った作品で、実際面白くなっていると思います。ビジュアルは特に文句無く面白いと思ってるんですよ。いろんな画がありますし、奇想天外な部分もあるんで、観ていて唐突に感じる展開もあるかもしれませんが。本当に、類を見ないような映像になっていると思いますよ。

── お話は、基本は原作に沿っているんですか。

   ええ。基本的にほとんど同じです。かなりシンプルな話で、トンデる展開なので。後半をちょっとひねってるぐらいで、具体的な展開もあまり変わっていないです。本当はここまで原作どおりやるつもりはなかったんですけど、出来上がったものを観ると「ああ、やっぱり原作と変わってないな」と思うんですよ。ホント原作がよく出来ているんです。特に最初のあたりのカット割りなんか、原作のコマ割りのまんまなんですよ。「カット割り、こうしたいな」と思ってから原作を見ると、原作もそういうふうになってて、「ああ、悔しいなあ。原作どおりじゃないか」って(笑)。

── それだけ湯浅さんの感覚と、原作の内容がフィットしていたんですね。

   そうなんでしょうね。上がってみれば、多少かたちは変えてますけど、ロビンさんの意図に沿ったかたちで映画にできたと思います。ロビンさんも仕上がった映画を観て「表現しているものは同じだ」と仰ってくださったんで。

── 後半をひねっているというのは、どういうことなんですか。

   原作では物語の後半もそのまま、「やればできる!」みたいな感じでストレートに突っ走っているんです。

── 映画でもそこがテーマになっていますよね。ちょっと違うんです。

   原作だと「やればできる!なんでもできる!どこまでも行け!」みたいな感じで行き切っちゃう。僕はそこまで行き切る自信がなかったんで、映画の方ではちょっと緩めたかたちにしたつもりです。「なんでもできるぞ!」と言いながらも壁にぶち当たったりして。やり遂げることができなくても、とりあえず努力することがいいじゃないか。結果が問題じゃなくて、努力している過程で楽しめれば、みたいになるといいなと思ったんですよ。






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