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── この作品は音楽も聴き応えがありますよね。 音楽、いいでしょ。山本精一さんという凄くコアな音楽家の方にやってもらっているんです。渡辺信一郎さんに音楽プロデューサーとして立っていただいてて。僕もCDはいろいろ聞くんですけど、誰がどういう曲を作っているのか全然把握していないので、渡辺さんにフォローしてもらったんです。それで山本精一さんを紹介してもらって。 ── 仕上がった曲はいかがでしたか。 ビックリするぐらいいろんな曲が上がってきて。山本さんの楽曲は、とにかく深いんですよね。そのくせ器用で、いろんな音楽が出来るんですよ。ほんとに自由で、ノリもよくて、盛り上がるし、怪しい感じもあって。もともといろんな音楽が欲しいと思ってたんですが、山本さんだとそれが一人でできちゃうというのも助かりました。それと、渡辺さんの紹介で、菅野よう子さんにも1曲、ピアノを弾いてもらったんです。そこは「あのクラシックのあそことあそこを混ぜ合わせたような感じで」とイメージして、テープ編集したんです。最初はそれを、田中プロデューサーのお子さんに教えてるピアノの先生に弾いてもらうという話だったんですけど(笑)、急に菅野さんに弾いてもらえることになって。弾いていただいてかなりいい感じになりました。 ── 制作期間はどれくらいかかったんですか。 企画からだと2年9ヶ月ぐらいかかりましたね。作画インしてからだと、2年ぐらいですかね。 ── 湯浅さんとしては何本目の監督作品なんですか。 初、ですかね。前にやったことあるのは、あまり陽の目を見ないようなテレビのパイロットとか、イベントでだけ上映する短編アニメくらいなんですよ。本格的には『マインド・ゲーム』が初めてで、大げさに言うと、これが初メジャーデビュー作品です(笑)。 ── それを意識した部分はありますか。 広くたくさんの人に観てもらえるような作品にしたいというのは、今まで関わってきたものと変わってないです。ただ、この前に作画と演出をやった『ねこぢる草』というビデオアニメは、狭いところを狙って作ったものだったので、それだけはちょっと違いますけど(笑)。でも、『ねこぢる草』のときに、不安になりながらもマイナーなことをやって、それなりに手応えもあったんで、今回はそういう部分も入れやすくなりましたね。 ── 『ねこぢる草』をやったことで、弾みがついたんですね。 ええ。まあ、やってもいいんだなという感じで。それで『マインド・ゲーム』は自由に作れたところもありますね。 |
── そういえば、キャラクターの設定が原作とちょっと違うんですよね。生い立ちとか。 僕はストーリーものをやるのは、これが初めてだったんですが、やってみてバックストーリーっているんだなと思いました。今まで「バックストーリーなんて、なんだか怪しいな」って思っていたんですよ(笑)。 でも、じいさんはずっと鯨の中にいたわけですが、その30年間という月日がピンとこなかったので、30年という流れの絵をちょっと入れた方がいいんじゃないかと思って、ついでにじいさんの赤ん坊の頃からの絵を入れたんですよ。あと、主人公の世代の若い子の小さい頃なんて分からないじゃないですか。それで、登場人物に歳が近いメインスタッフ達にそれぞれいろいろ書いてもらって、登場人物の年表みたいなものを作ったんです。こっちが学生の頃に見たものを、向こうは子どもの頃に見てる、その時の年齢での受け止め方みたいなものを書き出してもらって。それで登場人物の生い立ちを、走馬燈のように作って映画の頭に入れたんですけど。そうしたら、5分以上になっちゃったんですよ(苦笑)。ちょっと長すぎたので、最初にちょこっとそれを見せて、エンディングに改めて全部を見せる構成にしたんです。 多分、最初の部分で観ても全然分からないはずですが、最後にまた観ると、前半に観た時に分からなかったものが、ちょっと見えてくる。それがストーリーの中で西君の内面が変わって色々なものが見えてくるのとリンクするんじゃないかと思って。西君が感じたことを、映画を観ている人にもいくらかでも感じてほしいと思いました。 ── その走馬燈的なパートが映画に深みを与えていますよね。 クジラの中に入ってしまった西君が外に出ようとすることに関して、「なんで出ていくんだ?」という疑問がスタッフの中から上がってきたんですよ(苦笑)。そりゃあ外に出たいだろう、と僕は思ったんですけど、「クジラの中の方が楽しいんじゃないの?」という意見が意外と多くて。 「あれ?」って思ったんです。じゃあ、なんで出ていきたいんだって考えるとですね、こういう口幅ったいことはあまり言いたくないんですけど……なんで世の中で生きていくのがいいのかというと、僕は「面白いから」だと思うんです。まあ、劇中で西君にはっきり言わせちゃってますけど、いろんな人がいて、いろんな人生が混ざり合って出来ている世の中が面白いと思うんですよ。その人達と接し合いながら、自分もまたこの世の中を作っていくわけです。社会的にそんな大したことをやらなくても、素晴らしいと思うわけです。そういうのもちょっと感じてもらえたらな、と思って。 |
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