| サイトトップ | スペシャルトップ | プロダクションノート | 湯浅監督インタビュー | ミルクマン斉藤コラム | 作品キーワード |
| マインド・ゲーム スタッフコメント | ゲストコメント | スロットマシン | ??? |

映像創作集団、STUDIO4℃

■映画『マインド・ゲーム』ではビジュアルのみならず、湯浅監督のストーリーテラー、エンターテイナーとしての才能が存分に開花している。原作にあるメッセージ性をより普遍的なものに変え、劇中にふんだんに散りばめたギャグも百発百中。長編のストーリーものを手掛けるのは今回が初めてとは思えないほど、その手腕は確かなものだ。

■湯浅タッチといえば、大胆にパースの利いた構図と、独特の描線、そしてデフォルメを極めながらも現実味を感じさせる魅力的な動き。今まではTVシリーズのオープニングや、劇場作品のクライマックス・シーンなど、作品の1パートのみを任されることが多かったが、本作では当然のことながら全編にわたって湯浅ワールドが炸裂する。シネマスコープの大画面に展開するダイナミックなイマジネーションの爆発に加えて、緩急ある演出と心の通ったストーリー、ディテール豊かな世界観、様々な映像趣向によって、観る者の心と体を最後まで掴んで離さない。

■キャラクターデザインを手掛けたのは末吉裕一郎。湯浅監督と同様に、『クレヨンしんちゃん』シリーズをビジュアル面で支えるアニメーターの一人である。『マインド・ゲーム』ではロビン西の強烈な画風を再現しつつ、湯浅作品に相応しい奇抜な魅力をもったキャラクター造形を実現している。また、総作画監督としても湯浅監督をサポートし、自由奔放な湯浅テイストを抑え込むことなく、活発に弾けさせる方向で、映画全体に彼独特の色気とタッチを行き渡らせている。

■作画には2年の歳月が費やされ、少数精鋭でこつこつと作業が進められた。設定・作画監督補の久保まさひこ、美術のひしやまとおる、色彩設定の鷲田知子らがスタジオに常駐。CGI監督の笹川恵介は、湯浅監督によれば「影の監督」と呼べるほどの活躍ぶりで、本編のCG全般の作業を統括した。こうして、予算に見合わぬ(?)大作級のビジュアルが創り出されていったのである。

■スタッフの多くはSTUDIO4℃内の若手が中心となり、作品の野心的な試みに、皆が最後まで面白がって作ることができたという。「本編が上がる前にマンガだけ見ても、アニメーションとしてイメージできる人はいなかった。それを湯浅さんが可能にしてくれた」とは、田中プロデューサーの弁。


映像創作集団、STUDIO4℃

■湯浅監督作品としてプロジェクトがスタートしてからも、スタッフは依然として実写映像にこだわり続けた。監督の「普通のアニメにはしたくない」という思いと、作品に持たせるキャッチーな部分として、実写導入の検討が続けられた。「思いきって映画の半分を実写にする」「オープニングの10数分間を実写にして、途中からいつの間にかアニメになる」といった様々なアイディアが出されたが、最終的には「ある瞬間に思いついたように実写が挿入される」という非常にラフな方向に決定。結果は完成した映像をごらんの通り、意表を突く面白さが生まれている。

■実写パートの制作には、CM界の鬼才・中島哲也監督の撮影チームに協力を仰ぎ、湯浅監督のディレクションの下に撮影が行われた。その後、STUDIO4℃は中島監督の劇場作品『下妻物語』('04)のアニメパート制作を引き受け、『マインド・ゲーム』の恩を返した。


映像創作集団、STUDIO4℃

■関西弁のセリフの面白さも原作の魅力の一つであり、それには笑いの要素は欠かせない。STUDIO4℃は今回の作品で、吉本興業とコラボレート。今田耕司、藤井隆、山口智充(DonDokoDon)/ 島木譲二、中條健一、そして坂田利夫と、笑いのプロフェッショナルが一堂に会した豪華なキャスティングが実現した。全編に横溢するギャグに生命を吹き込みつつ、それぞれが素晴らしい演技を見せ、思わず涙を誘う場面も一つや二つではない。とりわけ、主人公の西を演じる今田耕司の、自然体の好演が光る。抑えた演技で好感を滲ませる山口智充や浮き世離れしたじーさんを怪演する藤井隆、ヤクザのボス役でいい味を出しまくる島木譲二、豪快な壊れっぷりが恐ろしくも可笑しい中條健一、そして、だらしないけど憎めない姉妹の父親を飄々と演じる坂田利夫など、さすがに新喜劇の舞台の上で鍛えた演技力は折り紙付きだ。

■主人公が一途に思い続けるヒロインみょんと、その姉で、おとなしく見えて実はアーティスト志向のヤン役を演じるのは、前田沙耶香とたくませいこ。どちらも読売テレビ「プロの動脈」でのオーディションで選ばれた二人だが、奔放な妹みょんと我慢強く内向的な姉、それぞれのキャラクターの魅力をフレッシュな演技で十分に引き出している。ヤクザの兄貴分を渋く演じる「演劇集団 円」の西凛太朗のカッコよさにも痺れる。

■また、声の出演のみならず、各キャラクターの実写部分も、それぞれ担当している声優本人が演じている。アニメーションの中に突然現れる今田耕司やドンドコぐっさんの顔に、はたまた島木譲二のダークな目元に、吹き出さない人が果たしているだろうか? 特徴的な湯浅アングルで捉えられた彼らの顔は、まさに飛び道具。






©2004 MIND GAME Project